社長は社員に感謝の気持を伝えなさい

 

 



◆ お客様が教えてくれた感謝の気持ち

   「お客様に感謝の気持ちを抱く社員を育てるには、どうすればいいですか?」とよく質問される

ことがあります。

   私が「心から」お客様に感謝の気持ちを感じるようになったのは、私が実家のディスカウントストアで東京・新小岩に店を出した31歳のときでした。

  新小岩店は大きな投資をともなう出店で、昭和52年12月1日オープンしました。

   オープン直後、木曜日から日曜日まで4日間のセールで1億円売りました。この期間で売った金額の20倍が年商になると見込んでいたので、「この調子ならば20億円くらいは売れる。先行きはどうにかなりそうだ」と、このときは思いました。

   ところが、その次の月曜日は、売上が130万円。20億円を300日の営業日で割ると、1日700万円の売上が必要です。本店の押上店では、27〜28億円は売れていましたから、平均900万円が毎日の売上です。

   本店は売れないときでも1日に300〜450万円の売上があり、バーゲンをすれば、1000〜1500万円は売れていました。このように「売れる押上店」で、3〜4年間売れるチラシの方法などを実証してから満を持して新小岩に店をつくったのですから、最初の月は売上が悪くて夕食を食べるどころではありませんでした。

 

   そこで年間25回予定していたチラシを36回に増やして、第1週、第2週、そして25日の給料日の頃を狙って月に3回チラシを折り込みました。もちろん経費もかかりますが、背に腹はかえられません。

   チラシのタイトルも「衝撃の挑戦!」というタイトルに変えました。それまで本店では「春のセール」「秋のセール」「大バーゲン」というようなタイトルでチラシを作成していたのですが、全面的に変えたのです。なぜ、「衝撃の挑戦!」というタイトルをつけたかというと、自分の心のあらわれでした。まさに挑戦するような思いで価格を設定し、その気持ちをチラシにのせたのです。

   こうした結果、翌年12月の売上は2億9000万円になりました。1日平均1000万円の売上です。また、オープンして丸1年で25億〜26億円の売上に達しました。さらに、3月から翌年3月までの1年をとれば、2億円の黒字になっていたのです。

 

   その頃、地元新聞から原稿依頼を受けたので、地元の方がこれだけ買いにきてくれたことに対する感謝の気持ちをつづりました。「わずか1年前は潰れるかどうかと思っていたのに、何とか立て直すことができたのはすべてお客様のおかげです」という内容の原稿でした。お客様に対して「日々感謝」の心境だったのです。

   この時期を境に、私はお客様に対して「本当にありがとうございます」と心から頭を下げられるようになったと思います。

自分が全責任を負う環境で、お客様と真剣に向き合い、悩み、苦しみ、努力しながらお客様に認めてもらう―。そうした経験が、社員に心からの感謝の気持ちをもたせる上では必要なのかもしれません。

 

  ◆ 「感謝」の気持ちは言葉だけでは伝わらない

   部下に「感謝の気持ちをもちなさい」と言う前に、社長自身が部下に感謝の気持ちを伝えているかどうかを振り返ってみてください。

   社長が日頃の社員のがんばりに対して感謝の気持ちを伝えることが、感謝の気持ちを大事にする社内風土を醸成することになります。

   「がんばってくれてありがとう」と、いつも伝えているという人もいるかもしれません。

  しかし、感謝の気持ちは言葉だけでは伝わりきりません。形にあらわさないと相手には伝わらないのです。

   私は長年にわたり、宝石専門のコンサルタントをやってきました。最初のうちは、クリスマスプレゼントに、少しぐらい(きん)やプラチナが入っているものをプレゼントしても愛情など伝わらないだろうと思っていました。

     しかし、贈った宝石そのものに物語が込められていたり、20万円くらいの月給しかないのに10万円のものをプレゼントしてくれる気持ちや、安い給料でも1年間、毎月1万円ずつ貯めて、クリスマスにプレゼントしてくれたという行動の裏づけがあったとき、感謝の心が伝わるということに気づきました。

   モノをあげることは、偽善的に感じるという人もいるかと思いますが、実際には、人の「感謝の念」は、モノや行動がともなうほうが圧倒的に伝わりやすいのです。

   反対にいえば、そうしたモノや行動がなければ、なかなか伝わらないというのが現実なのです。

   一般に多くの家庭では、ご主人は心の中で「女房には感謝している」と思っていることでしょう。しかし、それだけでは足りないのです。態度やモノであらわさなければ、相手にはなかなか伝わりません。

   夫婦の場合ならば、「おまえがいてくれて助かっているよ」ということを、きちんと口に出して褒め、感謝することが大切です。さらに、定期的にプレゼントをすれば、その気持ちが嘘でないことがわかります。

会社も同じです。部下にも「なぜ感謝の気持ちを形にしてあらわすことが大切なのか」を伝えていく必要があるでしょう。

たとえば、部下に、「キミが成長したことがうれしい」と言葉に出して伝えるだけでなく、「今日はごちそうするよ」と言って、ランチや飲みに誘う。感謝の気持ちは、形にあらわすことが重要です。社長自らが手本を示すことによって、感謝の気持ちのあらわし方を教えることも必要になります。

AAAA