社長は、「素頭」の良い社員の育成を急ぎなさい

 

 




◆「素頭」と「地頭(じあたま)」は異なる

   私はこれから、そこそこの質のものを大量に安く売るこれまでのバリュー商品の時代から、いいものを少量でも高く売るワース商品の時代に変わるのではないかと見ています。

   ワース商品を販売するには、素頭のよい社員が必要になります。

   よく「地頭がよい」という言い方をしますが、この場合は計算力や記憶力がいいことを指すと私は考えています。これに対して、場の空気を瞬間的に読みとれる力がある人のことは「素頭がよい」といいます営業マンに必須の資質は、「地頭のよさ」よりも、「素頭のよさ」なのです。

   では、どのようにして「素頭」を鍛えればよいのでしょうか。

   2006年あたりから女子高生の間で使われ始めた、その場の空気が読めない人を揶揄する「KY(ケーワイ)」という言葉は、われわれシニア層も使ってしまうほど、ポピュラーな言葉になりました。

   場の空気、つまり雰囲気を瞬間的に読みとって、その状況にふさわしい言動をとらないと場をしらけさせてしまうケースはよくあることです。

   素頭は、KYとは逆で、相手の心の温度を読みきることです。相手が今、本当は温かい気持ちでいるのか、寒い気持ちでいるのか、こちらの話に乗っているのか、しらけているのかということを「間」の温度で読めることです。

   営業マンは、学校の成績がよくなくても、素頭さえ鍛えていれば、必ず業績を上げられます。

   業績を上げる営業マンは、お客様の表面上の言葉だけでなく、その裏に隠された本音を読みとることが得意です。

   たとえば、私たちコンサルタントが企業の社長のもとに営業に行くとします。すると社長が、「わざわざ来てくださってありがとうございます。実は、うちにはこのような問題があって……」と言うときに、本音を言う人は10人のうち1人か2人。ほとんどの人は見栄を張り、体裁を取り繕いながら話しているものです。

   本当は、その人が口にしていない根っこの部分の問題に、一番の悩みが潜んでいるのです。この根っこの悩みを30分くらいで見抜けたら、絶対に仕事は決まります。根っこにある悩みの部分を探りながら、過去の事例などを引き合いに話してみて、相手が「そうなんですよ」と本当の悩みを打ち明けてくれたら、仕事はほぼ受注できているようなものです。

   相手の言葉尻だけをとらえて表面的な答えをするようでは、まだまだ程度が低いのです。相手の心の裏や奥にある本音を見抜けないと、「素頭がよい」とはいえません。

   優秀な営業マンは、瞬間的に場の空気を読み、寒ければ温める工夫をすることができるものです。私も、よく講演のときにお客様が話に飽きてきたり、退屈し始めたと感じると、すかさず笑えるネタを挟むようにしています。場の空気づくりが、仕事を充実させる地ならしとなるのです。

 

  社長の言動が会社の空気をつくる

 

社長は誰よりも、場の空気が読めなければなりません。社長の言動が会社の空気をつくっているからです。

全社会議の場で、社長がその場の空気を温めることができれば、社員のモチベーションが高まることにつながります。反対に、社長が自分勝手な言動ばかりしているようでは、社内の空気は冷えきってしまいます。そんな会社が業績を上げられるはずはありません。

社長のつくり出す社内の空気は、会社の業績を大きく左右するような、とてつもないエネルギーを有しているのです。

したがって、社長や幹部など上位の人ほど、社内の空気を左右する日頃のビヘイビア(態度・所作)に注意すべきです。

ちなみに、船井幸雄は、機敏に場の空気を読んで発言していました。業績が思わしくない決算であっても、「来期はマクロではよくなるはずだから、当社の業績もよくなるでしょう。期待していますよ」などと、本当は苦しくても場に配慮した言葉を選んでいました。社長がつくり出す場の空気が社員に与える影響をよく理解していたからでしょう。

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