「利益なくして安全なし」(2)
JAL会長・稲盛和夫が語る

 


       

JALには、御巣鷹山の事故以来、安全のためにすべての経営資源を集中させるという考え方。乗客の安全こそ我々の使命で、利益を出すことは邪道、という雰囲気があった。

しかし、これでは本末転倒です。そもそも潰れかかっていてお金もつかえなければ、安全は守れんでしょう。利益を出して余裕がなければ安全を担保できるわけがない。

そう幹部に問うと、みんな目をパチクリさせている。「そう言われてみるとそうだ」と。安全を守ることと利益を追うことは、相いれないものだと思っていたわけです。

このように未熟な理想論で経営をしてきたために、基本的な哲学、文化が欠落していた。彼らの意識を次々変えたことで、今では収益を上げることが罪悪とは誰も思っていません。

航空は装置産業であると同時に、究極のサービス産業です。JALに乗ってもらうためにはパイロット、CA(キャビンアテンダント)から空港の受付カウンターまで、接客態度が非常に大きなウエートを占める。

現場の従業員の方々にも、幹部の我々がいくら頑張っても高が知れている。「皆さんのカが必要なんです」と頭を下げて歩きました。CAの中には涙を流して、「会長、頑張ります」と言ってくれる人もいました。

パイロットも特殊技能者として高いプライドを持っていましたが、それではいけません。JALを選んでいただいたお客様に対して、機長としてお礼を言うべきです。お礼にスピーチを通して、「JALが変わった」と手紙が来るようになったと聞いています。

意識改革の象徴にしたのが、中村天風氏の言葉です。「新しき計画の成就は、ただ不屈不撓の一心にあり、さらばひたむきにただ想え、気高く、強く、一筋に」。京セラ、KDDIの時代にも使ってきた言'葉ですが、これを各職場に貼りました。意識を変えるのに役立ったのではないかと思っています。

 

                            以上