「長寿企業の秘訣と知恵」

 松下幸之助は、経営には絶対条件がある。経営理念である。経営理念が自社内で確立したならば、その企業は50%成功したようなものだと言うのです。顧客企業の経営者に経営理念を話すと殆ど理解されない。30年も成長していた企業ですら、経営者が無頓着であった。長寿企業の秘訣には経営理念が脈々と続いているのです。それが変化への対応への知恵が生きているのです。

「歴史ある企業に共通する理念」がある。それらを大別すると三種になる。

第一は「顧客本位」。泰澄大師の指示で開業した「法師」は、石川県小松市の粟津温泉で営業している「旅館」である。ギネスブックにも世界最古の旅館として認定されており、創業718年であるから、1300年近い歴史になる。金銭を蓄積するのではなく徳行を蓄積することを社是としてきた。江戸時代に策定された「金剛組」の『職家心得之事』には、見積もりなどを無私正直で作成することを遺戒として記述している。いずれも主客一体である。 

第二は「切磋琢磨」。東海地方特産の大豆を原料とする味噌は岡崎市内で隣接している「まるや八丁味噌」と「合資会社八丁味噌」の競争意識により数百年間維持されてきた。京都には十六世紀中頃に相次いで創業した「千切屋治兵衛」 千總」干吉」(最近終業)の和服の老舗があり、金沢には「森八」「中島」などの和菓子屋の老舗が競合している。単独首位のマラソン走者の記録更新が困難であるように、競争こそが維持と発展の要因となる。

 第三は「不易流行」。兵庫県姫路市にある十二世紀創業の「明珍本舗」は甲冑の老舗であるが、明治以降は注文がない。そこで鍛治の技術を駆使して火箸から風鈴へと主力商品を移行しながら家業を維持してきた。羊羹で有名な「虎屋」の現在の当主は革新の連続が伝統を維持するとの信念で、次々と新作の菓子を製造しながら500年の伝統を維持している。いずれも新生の企業にとって十分に参考になる経営理念である。




                                                                     以上