そこにしかない魅力があれば
どんなに不便でも人はやってくる


長引くデフレ不況のご時世でも、飛ぶように売れているものもあれば、千客万来でいつも繁盛しているところもある。今、モノやサービスの「価格」は、消費者が、そのどこに「価値」を認めるかで決まる。価格ではない。価値なのである。商品の価格は製品コストに直接関係はない。自分にとってそれがどうしても欲しいという「価値」あるものなら、高額でも買うのである。

「ない」といわれたところに市場はあった!この着眼「川北義則」著によれば、わざわざ交通の便がよくない温泉地を選んだり、あえて時間をかけて長旅を楽しむ人が増えている。例えば黒川温泉・・・。
熊本県阿蘇郡南小国町。阿蘇に広がる瀬の本高原から西へ約8キロ。筑後川の源流の一つ、田ノ原川沿いに20数軒の宿が連なる、小さな温泉街である。

交通の便は決していいとはいえないが、自然がいっぱいだ。博多から電車とタクシーを乗り継いで3時間強。東京や大阪などから行くとなると、かなりの道のりだ。泊1万2000〜1万5000円程度の宿もあるが、高い宿は一泊2万5000〜3万5000円もする。それでもこの小さな温泉街に年間約30万人の宿泊客、90万人の日帰り入浴客が訪れる。週末はどの旅館も3ヶ月先まで予約でいっぱいだ。

なぜ16時間もかけて北海道へ行くのか。例えばJRの豪華寝台特急「北斗星」「カシオぺア」の人気ぶりもそうだ。
飛行機で行けば羽田から1時間半の北海道に、わざわざ上野―札幌間を一昼夜、16時間以上もかけて行く。しかも運賃は飛行機より高い。北斗星で2万5270〜3万6150円、カシオペアで3万2320〜4万4460円もする。食事も安くはない。北斗星とカシオペアには、それぞれ「グランシャリオ」「ダイニングカー」という豪華な食堂車が連結されている。

ここで味わうディナーメニューは、北海道特産の素材をふんだんに使用したフランス料理のコースと、旬の素材で季節感が味わえる懐石御膳。それぞれ7800円、5500円と、いい値段である。それでも終末などは予約がいっぱいでなかなか切符がとれない。

そこにしかない魅力があれば、お客様は、喜んでくれる。