N0.27
日本のマーケティングは「桜あんぱん」から始まった

私たち日本人の多くは、「あんぱん」が大好きです。もし「あんぱん」
が、日本から突然姿を消してしまったら、だれでも淋しくなることでしょう。
「あんぱん」は日本人の食生活の中で欠かせない愛好食品の一つとなってい
ます。(『あんぱんはなぜ売れ続けるのか』井上昭正著 清流出版)

  「あんぱん」は、明治七(1874)年に、明治維新を迎え、武士を捨て 五十歳になった木村安兵衛という人が、「酒種あんぱん」を考案して、東京・銀座の「木村屋」(現在、木村屋総本店)で発売して以来、今日まで131年間も売れ続け、今も存続、発展し続けています。

あんぱん」が日本の伝統的食文化である「餡」と、西洋の伝統的食文化である「パン」を、組み合わせた「和魂洋才」の新商品開発。山岡鉄舟を通じて明治天皇へ「あんぱん」を献上して、天皇が大変お気に召され、それを突破口として、あんぱん市場を創造したのです。

当時はマーケティングという言葉はありませんでしたが、木村屋はいまでいうところの、マーケティングを見事に行っていたのです。
日本のマーケティングは実に、木村屋の「あんぱん」から始まった130年続いた
夢とロマンのマーケティング・ドラマです。

「あんぱん」の木村屋は、創業から今日まで137年間、時代や社会の変遷にもかかわらず、その取扱商品や業種を変えずに、「あんぱん」一筋に存続・発展してきた企業ですが、私は、このような存続・発展を可能にした最大の秘訣の一つは、木村屋の「マーケティング戦略」にある、とみています。

そこで、たった一つの小さな商品である「桜あんぱん」が、生まれたときの姿のまま、なぜ一世紀以上もの長い年月にわたって売れ続けてきたのかを、知りたい。

この「桜あんぱん」に木村屋独特の独自性が秘められているのは、創始者たちの「あんぱん」づくりに臨む姿勢とコンセプト・メーキングにあります。

まず第一は、『「あんぱん」(餡パン)の「ぱん」は、日本のものではなく、西洋独自のもので、舶来品というイメージがあるから、「あんぱん」は、何か日本らしい日本独自のイメージのあるものにしたい』というオリジナリティを、商品づくりのトップ・プライオリティ(最優先課題)に置いたことです。


第二は、「あんぱん」に日本の季節感を盛り込んで、日本文化の香りを漂わせようとしたことです。

日本の四月は桜の季節であり、桜は日本の国花なので、八重桜の花びらを「あんぱん」に埋め込むことによっ
て、日本独自の商品に仕上げたことです。

第三は、明治天皇に献上するさい、何か記念になる「あんぱん」を
つく
りたいと考えて、最高の品質を求めたことです。


こうして「桜あんぱん」は、水戸屋敷に届けられ、明治天皇のお気に召し、ことのほか皇后陛下(昭憲皇太后)のお口にあったと、大変喜ばれました。そして
「引き続き納めるように」という両陛下のお言葉があり、宮中御用商に加わる
ことになったのです。


このようにして生まれた木村屋の「あんぱん」は、現在も「桜あんぱん(酒種桜)」というブランドで販売されており、今も変わらぬオリジナルな味を伝え続けています。まさに「桜あんぱん」の商品価値は、そのオリジナリ
ティにあるというわけです。


木村屋の社是に、「企業家精神」その志が伝わっているのです。木村屋の「5つの幸福」・お客様の幸福・パートナーの幸福・従業員の幸福・会社の幸福・自分自身の幸福があります。

木村屋の発展は、「発想」と「志」そして「人との出会い」がよかったと思います。 我々も「人との出会い」を大切にし、本業に徹底して、「離れるな、続けるな、中味を変える」と商品に力を入れていくことが必要です。